形を整える工程において、技術の差が最も顕著に現れるのが内部の「綿入れ」である。ぬいぐるみ制作の第一人者として第一線で活躍する平栗あずさ氏は、著書や各種メディアにおいて「綿入れは単なる充填ではなく、立体を彫刻する作業である」と主張する。塊のまま綿を詰め込むのではなく、あらかじめ手でふんわりとほぐしたポリエステル綿を小分けにし、ピンセットや細棒を使って隅々まで届かせるのがプロの流儀だ。
顔や胴体の丸みを美しく出すには、内側から生地を均等に押し広げる意識が欠かせない。綿の量が少ないと表面にシワが寄り、逆に過剰に詰めすぎると縫い目に負荷がかかって歪みの原因となる。手に持った際の適度な弾力と、360度どこから見ても破綻のない美しいシルエットを兼ね備えた塩梅こそ、作品の価値を高める絶対的な極意と言える。