拳を描く際につまずく最大の理由は、骨格と筋肉の相互作用を無視して描き進めてしまう点にある。解剖学的な視点に立つと、手根骨から伸びる中手骨のラインは直線ではなく、なだらかなアーチを描いている。拳を握りしめたとき、ナックル(中手指節関節)の並びは水平ではなく、中指を頂点としたゆるやかな山型の曲線を描くのが自然だ。
さらに見落としがちなのが親指の起点である。親指は他の4本の指と異なり、手首に近い位置から斜め前方に生えている。拳を握った際、親指は人差し指と中指の第二関節の上に重なるように被さる。「手の解剖学」に基づいたこのレイヤー構造を意識するだけで、平面的で硬い拳から、生命力あふれる立体的な拳へと劇的に変化する。