実は、長谷川町子による新聞連載の原作4コマ漫画を読み返すと、「磯野家の固定レギュラーとしての白猫・タマ」は登場しません。原作に描かれているのは、魚をくわえて逃げる名無しのドラ猫や、磯野家に出入りする近所の野良猫たちであり、猫はあくまで昭和の日常風景を切り取るための舞台装置でした。
アニメ化がスタートした1969年(昭和44年)当時、毎週動きのある30分番組を成立させるにあたり、子供から大人まで親しみを持てるマスコットキャラクターが必要とされました。そこでアニメ制作陣がオリジナルキャラクターとして生み出したのが「タマ」でした。
名前の由来は、日本の伝統的な猫の愛称である「タマ(玉のように丸く可愛らしいこと、あるいは宝石の意)」から名付けられたという極めて王道なもの。しかし、アニメ初期のタマを振り返ると、現在のふっくらとした姿とは大きく異なっていました。
初期の作画におけるタマは、現在よりも体が細く、どこか野良猫の面影を残した「ガリガリ」の体型で描かれていました。これは当時の日本の飼い猫が、現代のように栄養管理されたキャットフードを食べるのではなく、ご飯に味噌汁や魚の骨をかけた「ねこまんま」を食べて外を自由に歩き回っていた世相を忠実に反映していたためです。
時代が昭和から平成、令和へと移り変わるにつれ、室内飼育が定着し、飼い猫が家族の一員として大切に扱われる現代の世相を反映して、タマの体型も徐々に丸みを帯びた健康的なフォルムへとアップデートされていきました。