海洋散骨を選んだ遺族が直面するトラブルの根底には、「海に撒いてしまえば、二度と遺骨は手元に戻らない」という不可逆性があります。お墓や納骨堂であれば、後から改葬や分骨を検討できますが、波間に溶け込んだ遺骨を取り戻す術はありません。
実際に消費者窓口や終活相談に寄せられる海洋散骨トラブル事例を紐解くと、特に目立つのが「散骨直後の深い喪失感」です。故人の「海が好きだったから散骨してほしい」という生前の遺言を忠実に守ったにもかかわらず、四十九日や一周忌を迎えた頃に「どこに向かって祈ればいいのかわからない」「お参りできる場所がない寂しさに耐えられない」と涙を流す遺族は少なくありません。これが海洋散骨で後悔した理由の筆頭に挙げられる心の落とし穴です。
また、海というパブリックな空間に対して、関係者全員が同じ価値観を持っているわけではないという現実も見落とされがちです。故人の配偶者だけで散骨を決めてしまい、血縁関係のある兄弟や親族が関与できないまま儀式が終わってしまうケースなど、関係者間の認識のズレが後々のトラブルを引き起こす決定的な引き金となっています。