医学的知見からこの現象を解明するアプローチも進化している。声帯の形態や臨床的変化を研究する日本音声言語医学会などの専門領域では、声の「掠れ(かすれ)」を生理学的な観点から分析してきた。
一般に声の掠れは、声喉の酷使による炎症や「声帯結節」といった病変から生じる場合がある。しかし、歌唱や表現において称賛されるハスキーボイスは、単なる組織の損傷にとどまらない。声帯の柔軟性や厚み、さらには喉頭蓋周縁の立体形状が奇跡的なバランスで組み合わさることで、呼気摩擦が不快な濁りにならず、豊かな「非周期性倍音」へと変換される。
天性の声質を持つ人物は、過度な結節を伴わずに高周波の倍音を安定して出力できる。喉頭組織の微小な非対称性が、意図せずして唯一無二の音色を作り出しているケースも少なくない。