映画『国宝』の物語は、1964年の長崎から幕を開けます。任侠一門の家に生まれた立花喜久雄(吉沢亮)は、抗争によって父を失い、天涯孤独の身となります。そんな喜久雄の天賦の才を見抜き、引き取ったのが歌舞伎界の名門・花井半二郎でした。血筋がすべての梨園という特殊な世界に異分子として放り込まれた喜久雄は、自らの血を呪いながらも、舞台の上でしか生きられない表現者の業に目覚めていきます。
喜久雄の前に立ちはだかるのは、半二郎の実子であり、歌舞伎の正当な後継者として育てられた大垣俊介(横浜流星)です。二人は幼少期から兄弟のように育ち、芸を競い合う無二の親友でありながら、やがて「芸道の頂点」という唯一の席を奪い合う過酷な運命に翻弄されていきます。華やかな舞台の光と、奈落の底に潜む漆黒の闇。すべてを犠牲にして「神が宿る芸」を追い求めた喜久雄が、半世紀に及ぶ激動の果てにたどり着いた境地とは何だったのか。観る者の感情を根底から揺さぶる重厚な人間ドラマが展開します。