日本企業における伝統的な書類決裁では、印鑑を押す位置や順番に厳格な序列が存在します。一般的な稟議書では、承認欄が右から左、あるいは左から右へと役職順に並んでおり、担当者が起案し、係長、課長、部長、役員、社長へと順次押印が進んでいきます。
会社における本来の正しい押印マナーは、「文字が上下逆さまにならず、誰が見ても氏名が判読できるよう鮮明に真っ直ぐ押すこと」です。印影が不鮮明であったり傾いていたりすると、誰が承認したのか確認しづらくなるため、実務上はむしろマイナス評価につながりかねません。
それにもかかわらず、押印の角度に過度な気配りを求める風潮が生まれた背景には、形式的な忠誠心アピールを重んじる社内政治がありました。本来は業務内容の確認や決裁責任の所在を明確にするための押印が、「上司の機嫌を損ねないための儀礼」へとすり替わってしまった典型例といえます。