なぜここまでクマは人里を恐れなくなったのか。長年クマ類の生態を研究し、野生動物管理・環境保全の第一線で発言を続ける北海道大学大学院の坪田敏男教授は、過疎化に伴う耕作放棄地の拡大と里山の緩衝機能喪失を指摘する。人間と森を隔てていた「バッファゾーン」が消滅した結果、クマにとって人里は危険な場所ではなく、高栄養な食物が容易に手に入る魅力的な採食グラウンドへと変貌を遂げた。
日本クマネットワークなどの研究者グループも、気候変動に伴う植生サイクルの激変と個体群動態の相関関係に警鐘を鳴らす。指定管理鳥獣への追加決定以降、環境省も抜本的な捕獲支援やゾーニング政策の改定に乗り出しているが、現場の侵食スピードに対応が追いついていないのが実情だ。自然環境の構造変化そのものを直視しなければ、対症療法的な追い払いは限界を迎える。