席に着いた客の約8割が迷わず注文するのが、不動の看板メニュー「もやしワンタン麺(もやし麺にワンタンをトッピングする通称・もやしワンタン)」だ。運ばれてきた丼から立ち上るのは、鼻腔を心地よく刺激する独特の芳香。その正体こそ、スープの表面を覆う漆黒の「揚げネギ(焦がしネギ)」である。
エシャロットやネギをじっくりと油で揚げて作られるこの自家製揚げネギが、鶏ガラと豚骨ベースの澄んだ醤油スープに溶け込むことで、唯一無二の深みとビターなコクを生み出す。合わせるのは、うどんを思わせるほどモッチリとした自家製の平打ち太麺。強いコシを持つこの麺が、濃厚な香ばしさを纏ったスープをしっかりと持ち上げる。
具材の主役であるモヤシと豚肉の炒め物は、強火で一気に火が通され、シャキシャキとした小気味よい食感が最後まで損なわれない。そこへ滑り込むのが、極薄の皮で包まれたツルツルのワンタンだ。口に含んだ瞬間に餡の旨味と皮の滑らかさが広がり、麺やモヤシの力強い歯ごたえと見事なコントラストを描き出す。
さらに、食通の間で密かに囁かれるのが「常連たちの頼み方」だ。メニュー表にはない微妙なカスタマイズとして、あえて「麺硬め」を指定して平打ち麺のワシワシとした食感を強調させるスタイルや、別皿の特製ラー油をもやし炒めへダイレクトに回しかけて辛味をブーストさせる食べ方が存在する。餃子用のタレに浸したワンタンを白米にワンバウンドさせる裏の楽しみ方など、自分だけの一皿を構築する自由度の高さもリピーターを狂わせる要因となっている。