白泉社が発行する『花とゆめ』の誌面で産声を上げた『ガラスの仮面』は、単なるヒット作という枠組を遥かに超えている。平凡な少女だった北島マヤが天賦の才を開花させ、過酷な試練を乗り越えながら舞台の上で千の仮面を被る姿は、連載初期から読者の胸を鷲掴みにした。
ライバルである姫川亜弓との凄絶な競演、冷徹な劇団つきかげの月影千草による苛烈な指導。劇中劇という重層構造を緻密に描き抜く筆力は、当時の少女漫画界に大きな衝撃を与えた。情熱と狂気が紙面から匂い立つような劇的演出は、いま読み返しても息を呑むほどの緊迫感を放っている。
美内氏が描いたのは、表現者の業そのものだ。役になりきるために泥水をすすり、荒れ狂う風の精になりきるマヤの執念は、リアリズムと劇画的迫力が交錯する独自の絵画世界によって圧倒的な説得力を獲得した。