普段は喜怒哀楽をほとんど表に出さず、機械のように冷静沈着な北信介が、作中で唯一、感情を決壊させた決定的名シーンがあります。それが、高校3年生の春高予選前、監督から主将の背番号「1番」のユニフォームを手渡された瞬間です。
中学時代、そして高校1・2年次と、北さんは一度も公式戦のユニフォームをもらったことがありませんでした。彼自身、「結果は副産物」「ユニフォームがもらえなくても、自分のやってきた毎日は変わらない」と頭では整理していたはずでした。しかし、実際に「1」と刻まれた布地を手にした瞬間、彼の目から大粒の涙が零れ落ちます。
この泣いた理由の背景には、2つの大きな心情が存在します。1つは、大切に育ててくれた祖母(ババァ)に「ユニフォーム姿を見せられる」という純粋な孝行心。そしてもう1つは、「自分もまた、周囲に認められたかったのだ」という人間らしい欲求と、それを信じて託してくれた仲間・監督への溢れる感謝です。感情を排して完璧を貫いてきた少年が、一番泥臭い人間味を見せたこの場面は、『ハイキュー!!』全編を通じても屈指の名場面としてファンの涙腺を崩壊させました。