しかし、婚約発表の直後から舞台裏では巨大な軋轢が生じ始めていました。二人が結婚しなかった理由の核心にあったのは、宮沢りえの母でありマネージャーでもあった「りえママ」こと宮沢光子氏の強い思惑と、相撲界の伝統的なしきたりとの決定的な衝突です。
伝統ある相撲部屋の女将になるということは、基本的に芸能界を引退して部屋を支える裏方に徹することを意味します。しかし、二人三脚で娘をトップスターに育て上げたりえママにとって、世界に羽ばたく才能を持つ愛娘が10代の若さで表舞台から去り、部屋の雑務や力士の世話に追われる生活を受け入れることは到底できませんでした。
光子氏は「結婚しても女優を続けさせたい」と強く主張し、一方で二子山部屋側は「相撲部屋の女将としての役割」を求めました。二人の純粋な想いをよそに、両家の価値観の溝は埋めることができないほど深まっていったのです。