従来の少年漫画における主人公や主要キャラクターは、最初から勇敢であるか、あるいは修行を経て順当に強くなっていくケースが多い。しかし善逸は違う。鬼を前にすれば容赦なく泣き叫び、地面を転がりまわって逃げ惑う。この徹底した人間臭さこそが、彼の土台となっている。
だからこそ、彼が眠りに落ち、意識が覚醒した瞬間の「静」と「動」の旋律が胸を打つ。無駄な動作を極限まで削ぎ落とし、目にも留まらぬ居合一閃で敵を絶つ。この緩急の凄まじさは、国内外のアニメーション産業においても類を見ない演出上の勝利だ。臆病だからこそ美しい。その命がけのギャップに、観客は息を呑む。