スクリーンに映し出された描写の裏には、さらなる現実のドラマが隠されていた。例えば、シュピルマン本人は終戦後、自分を助けてくれたドイツ人将校の命を救おうと必死に奔走した。しかし、ホーゼンフェルトはソ連軍の収容所で拘留されたまま、再会を果たすことなく他界した。この切なくも残酷な結末は、映画の余白に深く刻み込まれている。
また、ポランスキー監督は撮影にあたり、ワルシャワの街並みを再現するために旧東ドイツの軍施設を爆破してロケ地を作り上げるという妥協なき手法を選んだ。細部に宿る圧倒的な説得力は、監督自らの凄惨な実体験と、歴史の記録に対する偏執的なまでの誠実さから生み出されたものだ。