川越ラーメンの進化を語る上で外せないのが、地元が誇る伝統食材との深固な融合だ。特に、文政十(1827)年創業の「松本醤油商店」が作る「はつかり醤油」を使用した淡麗系醤油ラーメンが、いま異彩を放っている。
木桶でじっくり熟成された再仕込み醤油は、塩角が立たず、深く重厚なウマ味と華やかな香気を誇る。ある人気店の店主は「東京の有名店で修業してきたが、この地元の醤油に出会ってスープの設計をすべてやり直した」と語る。寸胴で炊き上げた丸鶏のベースに、極上のタレが合わさる瞬間、丼の中に小江戸の歴史が凝縮される。一口啜れば、まろやかなコクが口いっぱいに広がり、後味にはキレのある残り香。これまでの「観光地のラーメン」という偏見をあっさりと吹き飛ばす力強さだ。