生類憐れみの令が庶民や幕臣から不満を買う原因となった最大の要因は、江戸市中にあふれた野犬を保護・収容するために設置された巨大施設「中野犬小屋」にありました。現在の中野区役所周辺に建設されたこの施設は、敷地面積が約16万坪(東京ドーム約11個分)に及び、ピーク時には約10万頭もの犬が収容されていました。
犬小屋の運営には莫大な維持費が投じられ、犬の餌代として毎日米約330石、味噌や干鰯が大量に消費されました。これらの費用は江戸市民の町役(税金)や幕府財政から賄われたため、町民にとって重い経済的負担となりました。また、保護施設の管理を巡る役人の汚職や利権化が発生したことも、法令に対する市民感情を急速に悪化させる引き金となりました。