父の死と前後して、阿川佐和子さんに重くのしかかったのが実母の認知症と介護問題でした。次第に記憶が薄れ、娘の顔すら定かでなくなっていく母親を自宅と施設で支え続ける日々は、精神的にも肉体的にも過酷を極めました。
阿川さんは自らの介護体験を隠すことなく発信し、認知症介護に直面した家族が抱く「罪悪感」や「疲弊」に寄り添い続けました。完璧を目指さず、専門機関や周囲の手を借りることの大切さを痛感した彼女の言葉は、同じ境遇にある多くの介護家族に救いを与えています。
母を2026年に看取ったことで、阿川さんの中には「自分の人生の幕引きをどう迎えるか」「残された時間を誰とどう生きるか」という強い自覚が芽生えました。この介護を通じた精神的自立と生老病死への深い洞察が、60代以降の彼女の柔らかな生き方へとつながっています。