青いうなぎは、別の独立した生物種ではない。分類学上は広く知られるニホンウナギ(Anguilla japonica)そのものである。それにもかかわらず、なぜ児島湾の特定海域で獲れる個体だけが、見る者を息をのませる青緑色の皮膚を纏うのか。その理由は、旭川と吉井川が注ぎ込む児島湾の特異な地質と、贅沢極まりない捕食環境にある。
児島湾の泥底は、きめ細かく柔らかな軟泥層で覆われており、酸素を豊富に含んだ独自の泥穴が形成されている。ここで越冬し、生息するウナギは、硬い岩肌で体を傷つけることがないため、皮膚が極限まで薄く柔らかに保たれる。さらに決定的なのはその食性だ。通常のウナギがミミズや小魚、死骸などを貪欲に捕食するのに対し、児島湾の青個体は湾内に群生するアナジャコや小型のカニ(ヒライソガニなど)、新鮮なエビ類を主食として育つ。良質な甲殻類に含まれるアスタキサンチンなどの色素と、澄んだ汽水域の光反射が重なり合うことで、背部は青藍色に輝き、泥の沈着を許さない腹部は純白に仕上がる。まさに環境が彫り上げた奇跡の色彩といえる。