原作は、第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した谷口菜津子による同名コミック『今夜すきやきだよ』です。原作漫画が持つ温かな絵柄と鋭い問題意識を見事に継承しながら、ドラマ版では連続ドラマとしての心理描写がより立体的かつ丁寧に再構成されています。
大きな特徴のひとつが、ともこが抱える「アロマンティック」に関する描写の掘り下げです。恋愛感情を持たない生き方が単なる設定にとどまらず、「誰かを愛せない自分はおかしいのではないか」「他者と深い関係を築く資格がないのではないか」という当事者の切実な葛藤として描かれます。ドラマ版では、脚本を手掛けた山西竜矢の丁寧な筆致により、セクシュアリティを特別視しすぎず、個人の自然なグラデーションとして日常に落とし込みました。
また、原作のエピソードをベースにしつつも、あいこが職場のジェンダーギャップに立ち向かう場面や、ともこがスランプを乗り越える過程など、ドラマオリジナルの日常シーンが追加されたことで、2人の絆が育まれるスピード感がより説得力を持って伝わってくる仕上がりとなっています。