サーフフォトグラフィーには、陸上からの超望遠撮影と、海中に入る水中撮影の2つが存在する。木本直哉の真骨頂は後者にある。
フィン(足ひれ)だけを装着し、重度の防水ハウジングで包んだカメラを抱えて激浪の中に泳ぎ出る。呼吸のタイミングを一つ誤れば、叩きつけられて意識を失う。死と隣り合わせの状況で、彼は完璧な構図を計算する。サーファーが描くマニューバー、砕ける波頭から差し込む光の筋、巻き上がる水の胞子。そのすべてが一瞬で交錯するポイントを見極める能力は、神業と言っても過言ではない。
テクノロジーの進化と変わらない肉体主義
デジタルカメラやドローンの登場により、空撮や高精細な映像表現は容易になった。しかし、木本は現在も自らの肉体を海に晒すスタイルを重んじる。海の冷たさ、潮の匂い、水圧の恐怖。それらを肌で感じながら押されたシャッターにしか宿らない「生のエネルギー」があるからだ。