久留米の焼き鳥屋に入ってネタケースを覗くと、誰もがその自由度の高さに息を呑む。「串に刺さればすべて焼き鳥」という懐の深さこそ、この街の流儀だ。豚バラやダルムといった豚肉系が主役を張るのは序の口で、なかでも全国へ波及した大発明が「巻物串」である。
その発祥とされる名店が「やきとり 鉄砲」だ。昭和の職人がアスパラガスを豚バラ肉で巻いて焼き上げた「アスパラ巻」を考案したのを皮切りに、エノキ巻、トマト巻、シソ巻、チーズ巻とバリエーションは無限に広がった。野菜の瑞々しさと豚バラの濃厚な脂が炭火の上で溶け合い、絶妙なハーモニーを奏でる。重くなりがちな肉料理を軽やかに楽しませるこの工夫は、フードサービス・外食産業全体に計り知れない影響を与えた。