腹上死が発生する根本的な理由は、性行為が人体に与える「急激な生理的ストレス」にあります。医学的に見ると、性行為は階段を2階分早足で駆け上がる程度の運動量(約3〜5METs)に相当すると言われています。健康な体であれば問題のない負荷ですが、血管や心臓に潜在的な疾患を抱えている場合、致死的なトリガーへと変化します。
行為がクライマックスに近づくにつれて、交感神経が極度に興奮し、アドレナリンなどのカテコールアミンが大量に分泌されます。これにより、心拍数は一時的に毎分130〜150回以上まで跳ね上がり、収縮期血圧(上の血圧)も200mmHgを超えるケースが珍しくありません。この急激な血圧サージが、動脈硬化を起こした血管や脳動脈瘤に強烈な圧力をかけ、破綻へと追い込みます。
さらにオーガズム直後には、興奮状態から一転して副交感神経が急激に優位となり、血圧と脈拍が急降下します。この自律神経の急変による血流の乱れが、致死性不整脈や虚血性心疾患を誘発する一因となっています。