ドラッグストアの店頭で「ものもらい用」として販売されている市販目薬を購入し、何週間も点眼したものの改善しなかったという経験を持つ方は非常に多いです。この失敗が生じる根本的な理由は、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と「霰粒腫」の混同にあります。
一般に「ものもらい」「めばちこ」と呼ばれる疾患の多くは麦粒腫です。麦粒腫は黄色ブドウ球菌などの細菌がまぶたの分泌腺に感染して生じる化膿性炎症であり、抗菌成分(サルファ剤や抗生物質)を含んだ目薬を使うことで速やかに軽快します。
一方、霰粒腫は感染症ではなく「物理的な脂の詰まり」が起点です。細菌が原因ではないため、市販の抗菌目薬をどれだけ注しても、詰まった脂の塊(肉芽腫)を溶かすことはできません。細菌感染を伴わない無菌状態のしこりに対して抗菌薬のみを投与しても、効果が得られないのは医学的に当然の帰結です。
ただし、霰粒腫の初期に細菌が二次感染を起こして赤く腫れ上がる「急性霰粒腫」の状態であれば、眼科処方の抗菌点眼薬や内服薬で感染を鎮静化させることが可能です。それでも、感染が治まった後には芯となる脂のしこりが残るため、最終的なしこりの縮小にはステロイド点眼薬の効果や温熱ケアが必要となります。