どんなに立派に肥大したさつまいもであっても、収穫のタイミングを誤ればすべてが台無しになります。さつまいも収穫時期の見極めは、カレンダー上の日数と地上部のシグナルの双方から判断します。
植え付けからの積算日数として、早生〜中生品種(シルクスイート等)で110〜120日、晩生品種(紅はるか等)で120〜140日が収穫の目安です。外見上の明確なサインは「下葉の一部が黄色く色づき始めた頃」です。霜が降りる直前まで粘ると芋が低温障害を受け、保存性が一気に失われて腐敗の原因となるため、最低気温が10℃を下回る前には掘り上げを完了させます。収穫作業は、土がしっかり乾燥している「晴天が2〜3日続いた日」を選んで行います。
そして、最も重要な科学的事実が収穫後の追熟方法です。畑から掘り出したばかりのさつまいもはデンプン質が主体の状態であり、糖度が低く、加熱してもパサパサとして全く甘くありません。さつまいも内部に含まれるβ-アミラーゼという酵素がデンプンを麦芽糖(マルトース)へと分解することで、あの濃厚な甘みが生まれます。
掘り上げた芋は水洗いを絶対に避け、半日ほど天日干しして表面の土を乾かします。その後、1本ずつ新聞紙に包み、通気孔を開けた段ボール箱に納めます。保管場所は温度13〜15℃、湿度85〜90%を維持できる冷暗所(北側の室内や床下収納など)が最適です。9℃以下の環境に晒されると細胞が死滅して腐敗する「低温障害」を起こすため、冷蔵庫での保存は絶対に避けてください。2週間から1カ月じっくりと追熟させることで、糖度が跳ね上がり、蜜が滲み出る極上の仕上がりへと昇華します。