今や伝説として語られる本作ですが、その制作現場は現代の労働環境からは考えられないほど過酷を極めていました。南野陽子自身が後年のインタビューや回想録で明かしているエピソードの数々は、まさに壮絶そのものです。
視聴者の誰もが度肝を抜かれた「スケバン刑事で鉄仮面を被っていた理由」には、二重の意味が存在します。劇中設定としては、主人公の出生に隠された「徳川高貴の血筋」と巨大な呪縛、そして母による身代わりの隠蔽工作という壮大な物語上の宿命でした。一方で、制作現場における実利的な理由としても、鉄仮面は大いに機能していました。多忙を極めるアイドルのスケジュールを縫うなかで、顔が見えないスタントシーンや代役のアクションを柔軟に差し替えられるという撮影戦略上の大きなメリットがあったのです。
しかし、本人が演じるシーンの過酷さは筆舌に尽くしがたいものでした。特に象徴的な武器である「南野陽子の重合金ヨーヨー」を巡るエピソードは有名です。
撮影で使用されたアクション用ヨーヨーは、重量感をリアルに出すために本物の金属で作られており、ずっしりとした重さがありました。これを勢いよく投げて引き戻す動作を繰り返すため、指の皮が何度も擦り切れ、時には内出血や流血を伴う負傷が日常茶飯事だったと振り返られています。さらに、投擲したヨーヨーが誤って自身の身体や周囲のセットに直撃して破損事故が起きるなど、現場は常に危険と隣り合わせでした。
睡眠時間は連日2〜3時間、早朝から深夜に及ぶ東映東京撮影所でのロケと歌番組の掛け持ちという極限状態の中、弱音を吐かずにアクションをこなした南野陽子のプロ根性が、作品のリアリティを支えていました。