野坂昭如の原作小説を読み解くと、アニメ版よりもさらに複雑な人間関係が見えてくる。実はおばさんは、最初から意地悪だったわけではない。清太の母親が亡くなった直後は、それなりの同情と受け入れの姿勢を見せていた。関係が破綻したのは、清太の「プライド」と、おばさんの「生活の困窮」が正面衝突した結果である。
二人が家を出て行った後、おばさんはどう思ったのだろうか。防空壕で二人が餓死したと知ったとき、彼女の心に去来したものは何か。近所の手前や、自身の倫理観からくる「後悔」や「後ろめたさ」は、間違いなく彼女の余生に暗い影を落としたはずだ。それは言葉にはされずとも、彼女の表情の端々に滲み出ていた。