現在、全国の耳鼻咽喉科で急速に普及し、臨床現場で標準的な選択肢として位置づけられているのがTRT療法(音響療法(Tinnitus Retraining Therapy)です。この治療法は、患者の耳に小型の音響発生器を装着したり、適切な環境音を活用したりして、生活に支障をきたさない程度の心地よい雑音(ホワイトノイズなど)を流し続けることで行われます。
目的は耳鳴りを力ずくで遮断することではありません。背景音を常に入れることで耳鳴り音との音量差を縮め、脳の注意の向け方を変化させる「馴化(じゅんか)」を引き起こすことにあります。人間の脳は、危険でない環境音を無意識に無視する機能を備えています。適切な音響刺激を受け続けることで、数ヶ月から1年ほどかけて脳の過剰な警戒アラートを解除していくアプローチです。