「アンジェルマン症候群の寿命は短いのか」という疑問を抱く方は少なくありません。しかし医学的見地から言えば、生命予後は良好であり、平均寿命は一般人とほぼ同等とされています。成人を迎え、40代、50代、60代へと年齢を重ねる当事者は大勢います。
ただし、健康寿命を維持するためには、てんかん重積発作の管理や、誤嚥性肺炎、予期せぬ転倒・水回りでの事故防止が不可欠です。小児期から大人になるにつれて、症状の現れ方には以下のような明確な変化が生じます。
- 多動や笑い発作の沈静化:幼少期に見られた激しい多動傾向や常に動き回る衝動、突発的な笑いは、思春期を過ぎると徐々に落ち着きを見せ、温和で穏やかな性格へと変化するケースが多く見られます。
- 運動機能の低下と関節拘縮:加齢に伴い筋緊張の亢進(痙縮)や側弯症(背骨の曲がり)、関節の拘縮が進行しやすくなります。小児期には歩行できていた患者が、成人期以降に自力歩行が困難になり、車椅子生活へ移行する事例も少なくありません。定期的な理学療法(PT)による関節可動域の維持が極めて重要です。
- 肥満傾向へのシフト:基礎代謝の低下や運動量の減少に伴い、体重が増加しやすくなります。体重増加は介助者の腰痛や身体的負担を直撃するため、成人期の体重管理は療育上の大きなテーマです。
- てんかん発作パターンの変化:幼児期のような激しい発作頻度は減少する傾向がありますが、成人期特有の非痙攣性てんかん重積状態(ぼんやりして反応がなくなる状態が続く)が見逃されるリスクがあります。
成人のアンジェルマン症候群当事者とその家族にとって最大の関門となるのが、「親亡き後」の生活基盤です。現在、多くの成人は生活介護事業所(デイサービス)に通いながら障害者支援施設やグループホームで暮らしています。しかし、重度の知的障害と夜間徘徊・てんかん発作への対応力を備えた受け入れ先は依然として不足しており、早期からの成年後見制度の準備や専門相談支援専門員とのネットワーク構築が必須となります。