桑名正博が単なる「鼻持ちならない金持ちの息子」として嫌われず、芸能界やファンから絶大な愛を受けたのはなぜでしょうか。当時のテレビ特番インタビューや自著、そして関係者の回顧録を検証すると、そこには船場・浪速独特の「粋なぼんぼん文化」が色濃く反映されていました。
ロック界の後輩やスタッフの証言によれば、桑名正博は財布の残金を一切気にすることなく、売れない後輩ミュージシャンたちを高級料亭やバーに連れて行き、何十万円という会計を平然と支払っていました。決して恩に着せることはなく、「ええから食え、音楽で天下取ったら返せ」と笑い飛ばすのが常だったといいます。
元妻であるアン・ルイスとの間に生まれ、後に同じく音楽の道を歩んだ長男の美勇士も、メディア取材で父親の豪快すぎる金銭感覚についてこう振り返っています。
公の場で見せた飾らない笑顔や、困っている人間を見捨てられない人情家としての一面は、富を誇示するためではなく「持っている人間が使うのは当たり前」という価値観の中で育ったからこそ生まれた、桑名正博ならではの美学でした。