物語のクライマックスであるゴン対ゲンスルーの戦いは、作中屈指の泥沼の消耗戦となりました。戦闘力や念の熟練度において、当時のゴンはゲンスルーの足元にも及びませんでした。師匠であるビスケの指導を経てもなお、基礎的な「流」のスピードと精度では圧倒的な差が存在していたのです。
しかし、勝敗を分けたのはゴンの常軌を逸した自己犠牲でした。ゴンは自らの左腕を囮として差し出し、リトルフラワーで左前腕を爆破破砕されながらも、右腕での攻撃を叩き込みます。さらに喉を潰されながらも退かず、あらかじめ掘っておいた落とし穴と大量のガソリン、そして大岩を利用した奇襲によって、最後は全身全霊の「ジャジャン拳」でゲンスルーを沈めました。
この戦いの後、読者の間で大きな議論を呼んだのが「ゲンスルー生存の理由」です。冷酷無比な大量殺人犯でありながら、なぜ彼は命を落とさずに済んだのか。その決定打となったのは、クリア報酬である「大天使の息吹」でした。
ゴンたちは自らの重傷を治すだけでなく、瀕死の重傷を負っていたゲンスルー、サブ、バラの3人にもカードの力を使って治療を施しました。これはゴンの「勝負には勝ったが、殺戮者と同じ土俵には立たない」というある種の純粋なエゴとハンターとしての倫理観、そして瀕死の仲間(バラ)を必死に救おうとしたゲンスルーが見せた人間的な哀愁に対する決着でした。悪党でありながら仲間への情を捨てきれなかったゲンスルーの姿は、冷徹な殺人鬼の枠を超えた深みを与えています。