改めて当時の視点から女性用小便器の功罪を整理すると、設備としての利便性と、使う側の人間工学・心理的受容性との間に激しいギャップが存在していたことが浮き彫りになります。
【メリット】
- 省スペース性:従来の個室ブースに比べて専有面積が狭く、同じ床面積に多数の便器を配置可能。
- 高い衛生面:便座に直接肌が触れないため、不特定多数が利用する公衆トイレでも衛生的。
- 節水効果:洋式大便器に比べて1回あたりの洗浄水量が少なく、環境負荷・運用コストが低い。
【デメリット】
- 身体的負担:体幹や脚力を使って中腰をキープする必要があり、高齢者や子どもには利用が困難。
- 着脱の手間:ストッキングやタイツなどの着用時に、かえって衣服の着脱に時間がかかる。
- プライバシーと心理:用を足す姿勢に対する羞恥心が強く、利用率が上がらなかった。
理論上の効率性や衛生面では極めて優秀だったものの、「人がトイレという空間に求めるリラックス感や安心感」を軽視してしまったことが、普及失敗の根本原因でした。