キャンバスに塗り込められたジャンヌの激動は、やがて映像芸術へと受け継がれた。その代表格が、映画『ジャンヌ・ダルク』(リュック・ベッソン監督、1999年)だ。主演のミラ・ジョヴォヴィッチが見せた鬼気迫る狂気と脆さは、古典絵画が積み上げてきた神聖なイメージを打ち破り、生々しい人間ドラマへと引き戻した。
泥にまみれた甲冑、荒れ狂う戦場、そして内なる声に苦悩する姿。本作の構図や光の設計には、西洋絵画の歴史的傑作に対する深いオマージュが息づいている。現在、本作はNetflixやU-NEXTなどの動画配信プラットフォームでも鑑賞可能であり、美術館で絵画を観る前の予習としても、鑑賞後の余韻を深める手段としても多くの美術ファンに選ばれている。動く絵画とも言うべき圧倒的なビジュアルは、絵画が追い求めてきた「人間の魂の極限」を現代に突きつける。