新宿駅西口から徒歩圏内、オフィス街と住宅地が混在するエリアに「パラダイス北欧」は位置する。近隣には女子大学のキャンパスやビジネスビルが並び、一見すると極めて日常的な街並みだ。その日常風景の中に溶け込むように存在する店舗のドアを開けると、そこには男性同性愛者のための専門空間が広がっている。
店内に並ぶのは、各種大人向けのおもちゃ、専用ローション、機能性インナー、そして多種多様な映像・出版メディアである。商業地として名高い新宿二丁目の歓楽街とは物理的な距離を置き、あえて西新宿というビジネス・文教地区の近傍に拠点を構えた点に、この店舗の独自の立ち位置が示されている。
知られざる創業の意図と店名の由来
「パラダイス北欧」という独特の店名は、1960年代から1970年代にかけて世界的に広まった「北欧=性の自由化と先進国」というイメージに由来している。当時、デンマークやスウェーデンといった北欧諸国は、ポルノグラフィの解禁や性教育の推進、人権尊重の姿勢において世界をリードしていた。日本における「北欧」の語感には、開かれた性意識と自由への強い憧憬が込められていたのだ。