国語学的な観点から「自力(じりき)」の直接的な対義語を問われれば、誰もが「他力(たりき)」と答えるだろう。自らの力量によって物事を成し遂げるのが「自力」であり、他者の力によって目的を果たすのが「他力」という二項対比だ。しかし、この対照図式をややこしくしているのが「他力本願」という熟語の存在である。
一般社会において「あいつは他力本願だ」と言うとき、そこには「自分では努力せず、他人をあてにする人任せな姿勢」という強い批判的・ネガティブなニュアンスが含まれる。だが、これは典型的な誤用だ。本来のニュアンスを知れば、日常生活で軽々しく他者を罵倒する目的で使うのがいかに不適切な文脈であるかがよくわかる。