渥美清の足跡は、決して寅さんシリーズの人情喜劇だけに留まらない。野村芳太郎監督がメガホンを取った1977年の大ヒット映画『八つ墓村』で見せた金田一耕助役では、原作の持つ飄々とした佇まいと底知れぬ洞察力を体現し、それまでの探偵像を鮮やかに塗り替えた。
喜劇役者としての天性の間合いを持ちながら、人間の業や哀愁を背負ったシリアスな演技でも日本映画界に多大な足跡を残した。日本映画製作者連盟が記録する歴代の興行記録においても、彼の主演作は昭和から平成にかけて常に上位に君臨し続けた。没後、その圧倒的な功績に対して国民栄誉賞が授与されたのは、まさに日本中が彼の演技に救われてきた証左であった。