えんがわという名称の由来をご存知でしょうか。あの特徴的な波打つような筋模様が、日本家屋の「縁側」に敷かれた濡れ縁の板目に似ていることから名付けられたと伝えられています。
魚の解剖学的な視点で見ると、えんがわ寿司として切り出される部位は、背ビレと尻ビレの根元にある担鰭骨(たんきこつ)を動かすための筋肉です。ヒラメやカレイは海底に潜みながら、ヒレを細かく波打たせて素早く泳ぎます。つまり、えんがわは人間で言えば酷使されるインナーマッスルのような場所であり、常に動かしているため独特の強い筋繊維が発達します。
一見すると面積が広そうに見える魚体でも、ヒレを動かすヒレ肉は上下の縁に沿って細長く走る合計4筋しか存在しません。可食部全体に占める割合はわずか数パーセント程度に過ぎず、魚1尾から握れる寿司はせいぜい4貫から6貫程度です。この絶対的な希少性こそが、えんがわが古くから通好みの贅沢な部位として珍重されてきた最大の理由です。