日本国内において、無性愛者はどれほどの規模で存在するのでしょうか。各種の社会調査やシンクタンクの公表データによると、性的指向としての無性愛者の割合は日本において概ね0.8%〜1.5%程度と推計されています。これは「100人に1人」という水準であり、学校の1学年や中規模のオフィスに数人は必ず存在する計算になります。
にもかかわらず、彼らが極めて不可視化されやすい背景には、社会学で「アマトノーマティビティ(恋愛伴侶規範)」と呼ばれる構造が存在します。これは「人生の幸福は排他的な恋愛関係の先にあり、成熟した大人であれば恋愛・結婚をして性生活を営むのが正常である」という無言の社会規範です。
日常会話における「彼氏・彼女はいないの?」「良い人を紹介するよ」という悪気のない声かけや、ドラマ・広告における過剰な恋愛礼賛は、当事者にとって絶え間ないマイクロアグレッション(無意識の差別・排除)となります。無性愛者の生きづらさの理由は、本人の気質にあるのではなく、恋愛至上主義を自明のものとして押し付ける社会側の硬直性に起因しています。