今回、長年頑なに取材を固辞してきた焼き鳥職人が、特別にその手の内を明かしてくれた。厨房の要となる大壺に湛えられた秘伝のタレ。それは創業以来、途切れることなく継ぎ足され、無数の鶏肉のエキスと脂を抱き込んできた歴史そのものである。
「うちのタレは、厳選した丸大豆醤油と長期熟成の本みりん、純米酒だけをベースにしています。余計な甘みは一切足さない。串をくぐらせるたびに鶏のゼラチン質と香味が溶け込み、熱と空気に触れながらゆっくりと熟成していくんです」と職人は語る。毎日欠かさず火を入れ、温度と湿度に応じて微調整を繰り返すことで、角のとれた深いコクとキレのある後味が生み出される。
さらに常連の間で争奪戦となるのが、一日数串しか提供されない限定メニューの「極上白レバー」と、朝引き鶏からわずかしか取れない「手ごねつくね」だ。臭みを微塵も感じさせない白レバーはフォアグラのようなとろける舌触りを誇り、粗挽き肉にナンコツと秘伝のスパイスを練り込んだつくねは、噛んだ瞬間に肉汁が弾け飛ぶ。これらの絶品串を口に運んだ瞬間、遠方からわざわざ足を運ぶファンの熱狂が腑に落ちるはずだ。