作中でギャグとして昇華されているバーニャですが、その描写の根底には野田サトル氏による徹底した歴史的・民俗学的リサーチが存在します。作中に登場する要素は、すべて実在するロシアの入浴文化に基づいています。
「バーニャ(Баня)」とは、ロシアや東欧地域で古くから親しまれている伝統的な公衆・家庭用蒸し風呂です。フィンランド式サウナと比較して、高湿度かつ強烈な熱蒸気(パル)を発生させることが特徴とされています。
また、作中で激しく打ち合っていた葉っぱの束は「ヴェーニク(Веник)」と呼ばれる白樺やオークの小枝を束ねたものです。これを使って全身を叩く行為は「ウィスキング」と呼ばれ、白樺に含まれる精油成分による血行促進、殺菌効果、アロマによるリラクゼーション効果を狙った正式な伝統医療的入浴法です。
ロシアの厳しい冬において、バーニャで限界まで体を温めた後に凍結した湖の氷穴や雪の中に飛び込む行為は、自律神経を刺激し免疫力を高める伝統的な健康法であり、作中の杉元たちの行動は文化的に極めて忠実な再現でもありました。