華やかなコンクールやCDリリースの一方で、山下が最も情熱を注いでいる領域の根底には「地域への還元」がある。地元である三原市の「三原市芸術文化センターポポロ」でのリサイタルは、彼の活動における重要な軸だ。
ポポロの優れた音響空間をフルに生かしたソロ演奏はもちろん、地域の市民がクラシック音楽に親しめるような親しみやすいプログラム構成にも知恵を絞っている。
音楽をホールから街へ飛び出させる試み
山下のアウトリーチ活動は、形式ばったホール演奏にとどまらない。小中学校での学校訪問演奏や、地域の公民館、小さなギャラリーでのサロンコンサートなど、人々が普段生活している場所へと自ら赴く。
「生楽器の音の振動を直接肌で感じてもらうこと。それが、音楽の本当の楽しさを伝える一番の近道です」
生の演奏に触れた子供たちが目を輝かせ、サクソフォーンの音に耳を澄ませる。地域社会に音楽の種を撒く泥臭い草の根活動こそが、山下の音楽家としての誠実さを物語っている。