一度自然界に定着した外来哺乳類を島嶼部から完全に排除することは、世界中どこを探しても極めて困難な事業とされてきました。しかし、日本の生態系保全事業は歴史的な金字塔を打ち立てています。
環境省は2026年9月、奄美大島において「フイリマングースの完全根絶」を正式に宣言しました。ピーク時には推定1万頭近くまで増殖したマングースを相手に、2000年代初頭から専門チーム「奄美マングースバスターズ」を結成。のべ数十万個の罠設置と探索犬の導入を続け、2018年4月の捕獲を最後に生息サインが完全に途絶えたことが統計的・遺伝子検査的にも立証された結果です。島嶼部における大規模な外来哺乳類根絶事例として、国際的にも極めて高い評価を受けました。
この成功を受け、沖縄本島北部(やんばる地域)でも「特定外来生物防除事業」が総仕上げのフェーズを迎えています。
沖縄島では北上を防ぐための「北上防止柵(マングース侵入防止フェンス)」を東西に設置し、北側のやんばる国立公園エリアにおいて徹底的な捕獲作戦を展開してきました。その結果、やんばる北部におけるマングースの捕獲数はゼロ近傍まで激減し、絶滅寸前だったヤンバルクイナの生息域は急速に回復。現在では道路脇や集落周辺でも頻繁に姿が確認されるまでに個体数が戻っています。
現在進められているのは、南部・中部の市街地を含めた本島全域での管理と、根絶に向けた緻密なモニタリング体制の継続です。
【プロの結論】人間の都合が生んだ生態系リスクから学ぶべき構造的教訓
ハブとマングースの歴史的経緯は、単なる過去の失敗談ではなく、私たちが自然環境と向き合う上での重要な教訓を提示しています。
近代農学が信奉した「生物農薬(天敵導入による害獣駆除)」という発想は、緻密な生態系影響評価(アセスメント)を欠いた場合、取り返しのつかない破滅的結果を招きます。自然界は人間の都合の良いシナリオ通りには決して動きません。「昼行性と夜行性の違い」という初歩的な生物学的特性すら軽視した導入計画が、100年以上の歳月と数十億円単位の国費、そして無数の希少種の命を奪う結果となりました。
現代の私たちは、「目先の不都合を安易な人為的介入で解決しようとする短絡的思考」を厳に戒め、科学的知見に基づいた長期的な保全倫理を持つ必要があります。