造幣さいたま博物館の最大の見どころは、教科書やニュースでしか見たことのない「お金と勲章が生まれる瞬間」を肉眼で目撃できる点にあります。旧東京支局(豊島区東池袋)から2016年にさいたま新都心へ移転・開館した当施設は、最新のセキュリティと見学動線が融合した設計となっており、見学者通路から製造エリアの息遣いがダイレクトに伝わってきます。
特に来館者の目を奪うのが、特殊な鏡面仕上げを施すプルーフ貨幣の製造工程です。一般的な流通コインとは異なり、模様部分を艶消しのフロスト状に浮き上がらせ、背景を鏡のように磨き上げるプルーフ硬貨は、微細な塵ひとつ許されないクリーンルームに近い環境で製造されます。熟練の作業員が一枚一枚厳格に検品する様子は、まさに日本の精密製造業の結晶といえます。
さらに、日本全国でも極めて貴重なのが勲章製造工程の公開エリアです。大勲位菊花大綬章や文化勲章をはじめとする日本の栄典制度を支える勲章は、機械による大量生産ができません。銀などの金属素地に色鮮やかなガラス質の釉薬(ゆうやく)を丹念に盛り付け、約800度の炉で焼き付ける「七宝(しっぽう)焼き」の工程や、ミリ単位の彫刻・研磨作業はすべて伝統工芸士の手作業によって行われています。ガラス越しに見る職人たちの研ぎ澄まされた集中力と手さばきは、単なる工業見学の域を超えた芸術鑑賞の体験を提供してくれます。