久留米の焼き鳥店を訪れた県外の人がまず驚くのが、「焼き鳥」の看板を掲げながら、誰もが迷わず豚バラを真っ先に注文する光景です。さらに品書きには「ダルム」「ヘルツ」「センポコ」といった聞き慣れない部位が並びます。
この独自のラインナップが定着した背景には、久留米という街ならではの2つの歴史的要因が存在します。
第1の理由は、昭和30年代に隆盛を極めた屋台文化と豚肉流通です。当時、ゴム産業や商業で栄えていた久留米の屋台街では、安価でスタミナがつき、炭火で脂を落としながらカリッと香ばしく焼き上げられる豚バラ肉が労働者層に絶大な支持を受けました。これが「串に刺せばすべて焼き鳥」という久留米スタイルの原点となりました。
第2の理由は、久留米が誇る医療都市としての歴史です。市内にある久留米大学医学部の学生や医師たちが屋台に通い詰め、ドイツ語の医学用語を使ってホルモンを注文したことが発祥とされています。
- ダルム(Darm):豚の小腸・白モツ。下処理を徹底し、外はカリッ、中はふっくらと焼き上げる名物。
- ヘルツ(Herz):心臓(ハツ)。
- センポコ:牛の大動脈。コリコリとした独特の歯ごたえが特徴。
- テッポウ:直腸。
学生たちの洒落から始まったドイツ語の呼び名がそのまま定着し、現在では市民権を得た郷土の味として全国の食通を唸らせています。