劇場アニメ版の『風の谷のナウシカ』は、単行本全7巻のうち第2巻の序盤(全体の約15%程度)までのエピソードをベースに、映画オリジナルのクライマックスへと再構築された作品です。当時、徳間書店の雑誌『アニメージュ』で連載中だった漫画を、映画として2時間の尺に収めるために大胆なプロット変更が施されました。
最大の違いは対立構造の規模です。映画版では「風の谷」「トルメキア軍」「ペジテ市」の局地的な抗争が軸でしたが、原作では巨大帝国トルメキアと、超常の力や古代技術を操る大国「土鬼(ドルク)諸侯国連合」の二大勢力による全面戦争が描かれます。風の谷族長としての義務を背負ったナウシカは、トルメキアの同盟軍(事実上の従属軍)としてガンシップを駆り、悲惨極まる戦火の最前線へと身を投じることになります。
また、ナウシカ役の島本須美をはじめ、ユパ役の納谷悟朗、クシャナ役の榊原良子、クロトワ役の家弓家正といった伝説的な声優陣の名演が映画の魅力を不朽のものにしましたが、原作を読み解くと各登場人物の行動原理や人間的深みはさらに重層的であることが分かります。