知性、端正な容姿、そしてプロ棋士という社会的地位。若い頃の桐谷さんには、結婚の機会がいくらでもあったように思えます。しかし、2026年現在に至るまで結婚歴はなく、生涯独身を貫いています。その背景には、かつて心に負った深い傷が存在します。
自著や各種インタビューの告白によると、桐谷さんは30代前半の頃、お見合いを通じて知り合った一般女性と真剣交際へと進展し、正式に婚約を交わしていました。新生活に向けた準備が進み、結婚式の日程や新居の検討にまで至っていた段階で、相手側からの突然の「婚約破棄」という悲劇に見舞われたのです。
破談の原因について桐谷さんは、結納や親族間の関係調整、双方の価値観の食い違いなどを明かしています。結婚を信じて疑わなかった若き日の桐谷さんにとって、土壇場での梯子外しは筆舌に尽くしがたいショックでした。この一件によって深刻な人間不信に陥り、他者に対して心の扉を固く閉ざしてしまう結果となりました。
さらにその後、バブル相場の狂乱と崩壊、連日の追証対応という金融地獄が続いたことで、私生活で新たなパートナーを探す精神的・時間的余裕は完全に消失しました。「女性と交際して家庭を持つ」という選択肢は、莫大な相場のプレッシャーの前に置き去りにされてしまったのです。