日本株で唯一無二、30年どころか36期連続増配という前人未到の記録を更新し続ける花王。1990年のバブル崩壊直前から一度も増配の歩みを止めていない事実は、海外の機関投資家からも「日本のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)」として高い敬意を払われてきました。しかし、その内情に足を踏み入れると、決死の覚悟で記録を繋ぎ止めてきた生々しい苦悩が透けて見えます。
同社の直近数年の決算数値を精査すると、原材料価格の高騰、ベビー用おむつ「メリーズ」の中国現地での販売不振、さらには国内日用品市場の過当競争による収益性の低下に直面してきました。その結果、純利益が落ち込む局面でも年間配当を「1株当たり148円から150円、そして152円へ」と、わずか1〜2円ずつ引き上げる形で記録を死守。一時期の配当性向は70%〜80%台前半にまで跳ね上がり、市場関係者やアナリストからは「純利益の大部分を配当に吐き出すタコ足配当に陥りかけているのではないか」という懸念すら囁かれました。
「花王という看板を背負う以上、連続増配の看板を下ろすことは経営陣にとって市場からの信認失墜を意味する」——ある市場関係者は当時のプレッシャーをこう明かします。幸いにも、同社は不採算事業の抜本的な整理と構造改革、主力日用品の戦略的値上げによって利益の底打ちに成功しました。しかし、利益成長が伴わない増配はいつか限界を迎えます。現在の花王は、キャピタルゲインを狙う積極投資先というよりも、「どんな経済危機でも減配だけは絶対にしない債権に近いディフェンシブ資産」としてポートフォリオの守りを固める役割に特化しつつあるのが客観的な真相です。