キーを回した(またはスタートボタンを押した)直後に発生するエンジン始動時の異音は、ドライバーから最も多く寄せられる相談の一つです。この段階で響く甲高いキュルキュル音の正体は、補機類を回転させるファンベルトがプーリー(滑車)との間でスリップを起こしている現象に他なりません。
エンジンがかかる瞬間は回転数が急激に変動し、オルタネーター(発電機)やエアコンコンプレッサーに大きな回転負荷がかかります。通常であればベルトのグリップ力によって滑らずに回転が伝達されますが、ゴムの弾力低下や張力不足が生じていると、負荷に耐えきれずに摩擦音が発生します。冷え切った早朝や長期間車を動かしていなかったタイミングで特に鳴りやすいのは、ゴムが冷えて硬化し柔軟性を失っているためです。
現在の乗用車の多くは「Vリブドベルト」と呼ばれる溝付きベルトを採用していますが、経年劣化したベルトは接触面の溝がすり減り、適正なグリップ力を生み出せなくなります。始動直後に数秒鳴って消える初期段階であっても、ベルト内部では確実に摩耗が進行している明確なサインです。