引退後の一歩は、鴨川ジムのセコンドとして後輩の指導や試合のサポートに回りました。しかし、この指導者としての期間こそが、一歩をボクサーとして飛躍的に覚醒させる修行期間となっています。
現役時代は鴨川会長の指示を愚直に実行する「インファイター」だった一歩ですが、客観的にリングを見つめ直したことで、試合の構造や駆け引き、左ジャブの重要性を理論的に理解する卓越したボクシングIQを手に入れました。さらに、現役時代以上に重いリスト・アンクルウェイトを日常的に装着し続け、毎日のロードワークを一日たりとも欠かしていません。
その成果が顕著に現れたのが、現役世界王者であるヴォルグ・ザンギエフや間柴了とのスパーリングです。ブランクがあるはずの一歩は、世界王者を圧倒するスピードと破壊力を見せつけ、縦横自在に旋回・急停止を繰り返す「新型デンプシーロール」の完成形を披露。現場にいた関係者全員が「なぜこの怪物が引退しているのか」と戦慄する場面が描かれました。