『黒革の手帖』を語る上で避けて通れないのが、2004年にテレビ朝日系で放送され社会現象となった米倉涼子版との比較です。同じテレビ朝日の木曜ドラマ枠で制作されながら、両者のアプローチには明確な個性と魅力の差異が存在します。
米倉涼子版の原口元子は、まさに「動」の悪女でした。高身長と抜群のプロポーションを活かした圧倒的な威圧感、百戦錬磨の男たちを真正面からねじ伏せるパワフルな佇まいは、観る者に強烈なカタルシスを与えました。華やかでゴージャスな銀座の絶対女王という風格が前面に押し出されていたのが特徴です。
対する武井咲版は、「静」の冷徹さと若さの危うさが際立っていました。経験の少なさを補うかのような知略と度胸、ふとした瞬間に見せる壊れそうな儚さが、怪物のような政財界の重鎮たちとのコントラストを鮮やかに際立たせました。「背伸びをして夜の街の頂点に立っている少女が、老獪な大人たちを出し抜くスリル」という新たなリアリティを吹き込んだ点において、武井咲版は米倉版とは異なる独自の金字塔を打ち立てたと言えます。