富士そばの歴史を語る上で欠かせないのが、創業者の丹道夫氏の存在だ。厳しい極貧時代を生き抜き、幾多の苦難を乗り越えて立ち上げた「名代富士そば」は、現在ダイタングループという組織形態によって運営されている。一般的な大手チェーンが徹底した中央集権型の管理を行うのに対し、ダイタングループは複数の運営会社に事業を分散させる独自のホールディングスに近い体制をとっている。
この分散経営こそが、現場の裁量を極限まで高める源泉となっている。丹道夫氏が掲げた「現場第一」「従業員の幸福」という理念は、各店舗の店長に自由度の高いメニュー開発や店舗運営の権限を与える形で体現された。作詞家としての顔も持つ丹氏の人間味が、画一化されがちなチェーン店に温かみのある血を通わせ、半世紀以上にわたり顧客に愛される基盤を築き上げたのだ。